12月22日に中国の楊鼎新九段がWechat(中国のSNS)で李軒豪九段がAI不正利用を行った疑惑を言及。「李軒豪九段と20番勝負したい。不当な扱いを受ければLG杯(来年2月の決勝)で引退する」と楊九段が発信し中韓で大きな話題となっている。(中国記事はこちら、韓国記事はこちら)
AI不正利用問題の発端となったのは、12月21日の春蘭杯準決勝で李九段が韓国の申眞諝九段に勝利し、決勝進出を決めたことだ。特に、44手目でAIの最有力候補と一致したことが注目されている。以降、李九段は中盤の約100手でAIの候補手トップ3を打ち続けたことに加え、韓国の解説棋士によればAIの一致率は85%に達したという。
また、ユーチューブ「BADUK TV」の生中継では、申九段の様子はリアルタイムで中継されたのに対し、李九段は静止画であり視聴者目線では対局状況を把握できない。(こちらの動画を参照)
楊九段によれば「李九段はここ数年独自のトレーニングしている点や、対局を行っていない点で、急成長に疑問を持つ」という。SNS上で中国ランキング1位の柯潔九段を含めたトップ棋士が同調しており、疑問を感じる棋士は少なくないようだ。なお、李九段は約半年で中国ランキング20位圏から2位に浮上している。
ただ、現状では決定的な証拠が公開されておらず、AI不正利用を断定するのは困難。世界トップクラスであれば、内容次第でAIの一致率が飛躍的に上がる場合もあり、状況証拠となるか難しいところ。
コロナ下の影響で、世界戦はネット対局で行われる運びとなっている。中国では世界戦を行う上で以下の3点を行われている。
・対局者は携帯の持ち込み禁止
・金属探知機による持ち物検査
・日中韓での詳細なルールに加え、三国間で監督者を派遣、カメラで対局状況を記録
※異議があった場合、ビデオ再生やルールに基づいて判定
また、監督者は対局者の行動や入退出の回数を含め、報告書を中国囲棋協会に提出されるという。
今後の展望
12月22日に楊九段は「静かにするよう指示された。(続けるようであれば)LG杯も打てないようにする」と記録を残している。常識的に考えれば、85%の一致率は無視できるものではないのも事実。一方で、対局状況の記録は中国囲棋協会が保有しており、AI不正利用が事実であっても、李九段のアリバイを覆すのは困難を極めるだろう。今後、どう情勢が動くのか注目していきたい。